Lesson 5 - インパーマネントロスの真実とよくある誤解
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インパーマネントロス……恐ろしい言葉です。クリプト民ならよく聞くしよく見るでしょう。でも、理解できてますか?(怖い、聞かないで!) この記事では、私たちシニアアルパカが、すべてのイールドファーマにつきまとうこのテーマについて、私たちの見解を述べます。老眼鏡をかけて、一緒にILについて見ていきましょう。
IL(インパーマネントロス)とは、LPポジションに含まれる2つの資産(トークン)の価格の比が変わり、AMM(自動マーケットメイカー)によりリバランスされた結果、発生する損失のことです。ILは、LPに含まれる2つの資産をそれぞれ単独で保有した場合と比較した損失です。
ぜんぜんわからない? 安心してください。この意味がわかるように、簡単な例を一緒に見てみましょう。
アリスが 10BNB と 3,200BUSD を持っていて、BNB-BUSDのLPプールで流動性を提供したとします。簡単にするために、1BNB=320BUSDと仮定し、彼女の資産はLPに必要な50:50の比率になっています。
t= 0(ピリオド0:開始時) アリスの資産=10BNB+3,200BUSD=6,400BUSD
しばらくして、BNBの価格が25%上昇し、1BNB=400BUSDとなりました。この価格変動の間、彼女のLPプールにある資産は、BNB:BUSDの比率が50:50になるようにリバランスされました。その結果、彼女のプール内の資産は次のようになりました。
LPでのファーミング t = 1 アリスの資産=8.94BNB+3,577.71BUSD=7,155.42BUSD
(8.94 400 = 3,577.71 1)
つまり、アリスは全体で7,155.42-6,400=755.42 BUSDの利益を得たことになります。
利益なので良さそうに思えます。こんな場合なのになぜインパーマネントロスについて不満を持つ人がいるのでしょうか? 損失はどこにあるのでしょうか? さて、アリスが資産をLPプールに入れずに、t=0からt=1までウォレットに入れていた場合と比較してみましょう。
ウォレットでの保有 t = 1 アリスの資産=10BNB+3,200BUSD=7,200BUSD
つまり、LPのポジションをもったことで、アリスの損失は44.58BUSDとなり、資産をウォレットに保有していた場合よりも0.62%悪化しました。この44.58BUSDの差がインパーマネントロスです。
下のようなチャートを見たことがあるかもしれません。これは開始時から価格の比が変わってしまった時のインパーマネントロスの効果を示しています。このチャートを見ると、左に急カーブを描いて-100%まで下がっているので、最初は恐ろしく感じるかもしれません。しかし、よくよく考えてみると、ILは他の投資リスクと変わらず、リスクを正しく理解し、適切なゲームプランを立てれば、損失の可能性を軽減し、リスクを許容範囲内に収めることができるでしょう。
ILチャートを少し拡大して、エントリーポイント付近の価格帯だけに注目してみましょう(下のチャート)。
この領域の傾きは非常に緩やかです。実際、LPペアの資産の価格の比がエントリーの50%以内に収まっていれば、インパーマネントロスは2%以下にとどまります。つまり、ILは短期的にはもちろん、変動の少ないトークンでは中期的にも大きな要因ではありません。ILは注意すべきものですが、よく理解していれば、必ずしも恐れるべきものではありません。これからそのお手伝いをさせていただきます。
インパーマネントロスを避けるため、確定さえしなければいいじゃん、ということでLPポジションを解除しなければいいという記事を見たことがあるかもしれません。
「2つのトークンの価格の比が当初の比に戻るのを待ってから、LPのポジションを解除する」
しかし、この提案は誤解を招く恐れがあります。この言葉は、株のトレーダーが「売るまでは損失ではない」と言っているのと同じです。実際には、LPのポジションには、買ってから値下がりした株を持っている場合よりも損失が「不確定なもの」になるような魔法はありません。どちらのシナリオでも、損失を消すためには価格が開始時と同じ比率に戻らないといけません。
LPの流動性を取り除いても、インパーマネントロスには何の影響もないことを証明するために、次のようなシナリオを想像してみてください。
LPポジションの資産の価格が変動して、インパーマネントロスが発生した時に、あなたはLPポジションから流動性を取り除いたとします。これは、前述の引用文の著者が、損失が確定することを意味し、しないように助言していることです。
しかし、あなたがLPから流動性を取り除いたとき、2つのトークンの価値の比は50:50なので、そのまままた流動性を提供すれば同じポジションに戻すことができ、流動性を解除してからもう一度やり直しても、解除する前と全く同じポジションを持つことができます。以前の開始時価格と比較して、あなたのインパーマネントロスは同じになります。
もし資産の価格が最初のエントリー時の価格に戻れば、あなたのインパーマネントロスは0になります。流動性を解除したことでインパーマネントロスが確定するというのは本当でしょうか? 答えは、そうではありません。
さらに言えば、流動性を解除してトークンをLP以外の場所で保有し、その後価格が最初のエントリー時に戻った場合、あなたは実際に「回復したインパーマネントロス」よりも多くの利益を得たことになります。このように、インパーマネント(永久的でない)ロスというのは誤解であり、他にも優れたフレームワークがあるのです。
ここでは、インパーマネントロスをちょっと違う角度から見て、ILをどのように活用すればよいのかをご紹介します。
AMMの資産リバランスでは、どんなことが行われているのでしょうか?
資産のリバランスがインパーマネントロスの原因ですが、資産のリバランスはどのように行われるのでしょうか? 真実は、皆さんが思っているよりもずっとシンプルです。例えば、開始時にBTC-BNBのLPペアを50:50の比率で始めたとします。資産のリバランスを考える上で、資産の実際の価格は重要ではなく、価格の比だけが重要です。そこで、50:50ではなく、比率を1:1に単純化してみましょう。
BTCの価格がBNBの価格よりも10%上昇した場合,1.1:1がアセットリバランス前の新しい比率になります。さて、AMMはこれを1:1にリバランスする必要がありますが、どうやってリバランスするのでしょうか?単純に、BTCを売ってBNBを買い足し、価値の比率が1:1になるようにします。BTCの価格がBNBに比べて上昇し続けると、AMMはBTCを売ってBNBを買い続けます。BTC の価格がBNBに対して相対的に下がると、AMM は逆にBNBを売ってBTCを買います。
どこかで聞いたような話だと思いませんか? これは、トレーダーがよく使う「ドルコスト平均法(DCA)」と呼ばれる戦略に似ています。要するに、AMMがやっているのは、高くなったら保有量を減らし(利確し)、安い時には多めに買う(ナンピン買い)をする自分のトークンに対するDCAなのです。
先ほどの例のように、BTCの価格がBNBに対して相対的に上昇すると、AMMはBTCのポジションをDCAで売り抜けます。BTCの相対価格が下がると、AMMはDCAで買いを入れ、BTCのポジションを増やします。これはトレーダーがよく使う戦略なので、AMMの資産リバランスをトレーディング戦略として活用できるのではないか? 答えは、「イエス」です。
ドルコスト平均法による積み立て
あなたの目標がBTCを貯めることであり、長期的には価格が上昇すると考え、クリプトが金融の未来であると信じているため(そうでない人はここにはいないでしょう😎)、価格が下がっても喜んで買い増しをするとします。
この目標を達成するためには、現金を保有して安値で買い注文を出すのではなく、単純にBTCとステーブルコインのLPペアに流動性を提供するという方法もあります。LPプールでは自動で資産のリバランスが行われるため、BTCの価格が下がると、あなたのポジションは自動的にBTCをより多く蓄積することになります LPのポジションは、AMMのアルゴリズムによって、ドルコスト平均法を実行し、より低い価格でBTCを購入することになるのです。
確かに、平均的な購入コストは、底値でつかめた時に比べると不利になるでしょう。しかし、本音を言えば、毎回底値をつかめることができる人がどれだけいるでしょうか?😅
LPは、寝ている間に実行される自動化されたボットのようなもので、どこが底かを推測する必要がありません。そして何よりも、ずっと利回りを稼ぎ続けることができます。だからこそ、LPポジションでのイールドファーミングは、長期的な投資視野を持つ初心者から中堅のトレーダーにとって素晴らしい戦略なのです!
この戦略の補足として、もし「価格が底を打った」と信じているのであれば、LPを解除してインパーマネントロスを確定した方が、その後のBTC価格の上昇でより多くの利益を得られるという考え方も提案したいと思います。
これがどのように機能するのか、例を挙げて説明しよう。
例:
ボブは手元に1BTCと40k BUSDを持っており、BTC-BUSDのLPプールに流動性を提供することを決めました。ここでは簡単のため、その時点で1BTC=40k BUSDと仮定し、LPを提供するための資産の比率を正確に50:50とします。
t = 0 ボブの資産=1 BTC+40,000 BUSD=80,000 BUSD
しばらくして、BTCの価格が30k BUSDに下がりました。
t = 1 ボブの資産=1.15 BTC+34,641 BUSD=69,282 BUSD
ボブは、30kがBTCの強力なサポートであり、底である可能性が高いと考えています。彼はここから価格が上昇すると考え、LPを引き出すことにしました。これで、彼の財布には1.15 BTC+34,641 BUSDが戻ってきました。 ここから先は、ボブの判断が正しく、その後、価格が開始価格の40kまで上昇したとします。
t = 3 ボブの資産=1.15 BTC+34,641 BUSD=80,641 BUSD
BTCが30k BUSDのときにLPを引き出したことで、BTCの価格が上昇したときにBTCの一部をBUSDに売り戻すような資産のリバランスの影響を受けませんでした。その結果、開始時に比べて641BUSDの利益を得ることができました(利回りは考慮していません)。将来の価格予測に自信が持てるようになったボブは、LPから撤退して単純保有にしたことで、相対的に利益を上げることができたのです。
ドルコスト平均法による分配
次の例は、上記の例の逆バージョンです。
価格が上昇したときに、暗号資産の利益を部分的に利確することに満足しているとします。このシナリオでは、一部をLPポジションに入れておきます。価格が上昇すると、AMMのアルゴリズムを通じて自動的にドルコスト平均法でポジション内の資産を売却します。
同様に、価格が頂点に達したと思ったら、LPを解除してトークンを売ります。そうすれば、価格が下がったときにAMMに買い戻されるのを防ぐことができます。そして、より低い価格で再度エントリーすることができます。また、アルパカを使ってショートポジションを作ることもできます。
横ばいの市場、または不安定な市場での投資
前の2つのセクションで説明したように、LPは、市場の方向性に確信が持てないときにリスクを軽減するために、ポジションをヘッジしたり、ポジションを解消したりするのに非常に役立ちます。フルタイムのプロトレーダーではない多くの人にとって、これは普通のことではないでしょうか? 実際には、プロのトレーダーであっても、市場の方向性予測が正しい確率は55%に過ぎません。
つまり、ここにいる私たちの多くはクリプトやさまざまな資産に強気ですが、その必然的なブレイクアウトが1ヶ月後に起こるのか、1年後に起こるのか、5年後に起こるのかはわかりません。もし、それよりも長い期間、これらの資産を財布に保有していたら、アルパカのようなプロトコルでイールドファーミングに参加した場合に得られたであろう利益の可能性を逃してしまうことになるのです。
だからこそ、LPはマーケット・タイミングに対するヘッジでもあるのです。たとえ不利なシナリオでも、短期間でブレイクアウトが起こり、インパーマネントロスが出たとしても、獲得した利回りで補うことができます。
上記の状況をもう少し詳しく見てみましょう。これまでは、市場に投資する際には次のような行動をとることがありました:
・市場や資産に強気であれば、その市場や資産を買う=ロングポジションをとります。
・市場や資産に弱気であれば、それを売る=ショートポジションをとります。
しかし、どちらかわからない場合はどうすればいいのでしょうか? 銀行に現金を預けて、ほぼゼロの利息を得ている状態で放置しておくべきでしょうか?
また、市場が休息期にあると考えた場合はどうでしょうか。ボラティリティーが高い時期の市場ではよくあることですが、大きな上下動が起こる前に、しばらくの間、市場が落ち着く必要があると考えます。結局のところ、しばらくの間トレードをしたことのある人は、市場が長期間にわたって動かない凪相場があることがあることを知っています。
凪相場や不安定な市場の時には、資産をLPポジションに展開することが良い投資戦略です。LPポジションは、価格が動かなくても利回りが得られます。また、資産の価格が上がったり下がったりしたときのDCA効果により、両方向に資産をヘッジすることができます。
この場合、戦略の一例としては、レバレッジをかけずに自動複利のLPポジションを建てるなど、シンプルなLPを行うことが考えられます。より大きな利回りを得たい場合は、レバレッジを使用して2倍のポジションを開き、ニュートラルで暗号資産を借りたり、選択した資産のロングまたはショートポジションに大きなレバレッジをかけたりすることができます。さらにリスクを軽減したい場合は、疑似デルタニュートラルポジションを建てることもできますが、これは資産価格があまり動かない場合に管理しやすいでしょう。
重要なのは、アルパカではほぼすべてのLP戦略が横ばいの市場で利益を上げることができ、利回りを得るために通常のロングやショートよりもはるかに利益を上げることができるということです。何をするにしても、ファームに一歩足を踏み入れれば、見渡す限り緑一色になることは間違いありません。
この記事が「インパーマネントロス」というトピックに少しでも光を当て、ドルコスト平均法やヘッジの目線で見れば、それが恐れるべきものではなく、あなたに有利に働くツールになることを願っています。
ご参加ありがとうございました! 今日はここまでにしましょう。
若いアルパカたち。このような記事をもっと読みたい方は、アルパカアカデミーをチェックすることをお忘れなく。ハッピーファーミング!